文学を志しながら挫折し,出版業で成功したエドワードは,永年の友人である作家ニコラにねじれた感情を持ち続けていた。ニコラの最新作の原稿に目を通したエドワードは,激しい怒りに震えながらも,この作品がニコラをフランスの第一級作家に押し上げることを確信する。やがてエドワードは書物を用いた完全犯罪を思いつくのだった。
マーブル紙,亜麻仁油,ライノタイプ,ディドー活字…などが物語の小道具となる。
原著は1993年にフランスで出版された "Tiré à part"(抜き刷りというような意味)。『エル』読者賞,フランス推理小説大賞などを受賞した。著者のJean-Jacques Fiechterはスイス・ローザンヌ大学の歴史学の教授で,小説はこれが初めてという。日本語版は榊原晃三訳,創元推理文庫(2000)。
(mich 2001/11/29)